そろそろいいころかなと思うので、
昨年の秋に作ったsosekiの初音ミクアルバム、オモイデバコのストーリーと、経緯について、ここに書き記そうと思います。


オモイデバコ

『覚醒する記憶』
昔、あるところに二人の少女がいました。
一人は明るい性格で、幸せに、もう一人は大人しい子で、複雑な環境で育ちました。
全く異なる二人でしたが、とても仲良し。
二人の少女は幼少の時を、平和に楽しく、笑い合って過ごしました。
しかし、楽しい時間は永遠ではありませんでした。

大人になるにつれ、人はそれぞれの道を選び、進んでいきます。
いつかまた、この丘の上で会おうと約束して。

たくさんの記憶を、ある言葉や、いくつかの音にしたためて、
どこかにしまったまま、忘れてしまったオモイデバコ。

失くしものは、必ず見つかります。
しかし、それが幸せなこととは限りません。
例えば、人は失って初めて大切なものの存在を再認識するのです。
手にしたときには、もう取り返しがつかないことだってあります。

楽しかった記憶も、悲しかった記憶も。
取り戻したい過去も、取り返しのつかない過去も。

思い出が今、覚醒する。【hesitate】

『一人目の音』
彼女の生い立ち。
唄うために生まれた少女。
でも、一人では唄えない少女。
いつしかとても有名になり、たくさんの人に愛され、
楽しい歌、悲しい歌、いろいろな音に囲まれた少女。【digital explosion】

『二人目の空』
どんなにダチと一緒にいても
彼女のさみしさが埋まらない。
雨にぬれる地面にしゃがんでいても
ぬくもりは得られない。
空を見上げても、雨の音が鳴り響く中、終わりのない闇があるだけ。
せめてこの広い空に、叫び声を、と。【この空に】

『一人目の恋』
メロディは心地よく流れゆくもの。
少女が恋した人に、このメロディは届くのかな。
私の唄声は、心の中まで満たしてあげられるのかな。
浮かんでゆくその温かな気持ちを、
飾らない言葉を並べて、ひとつの譜面にしたためる。
それだけで、幸せ。【flow】

『二人目の後悔』
丘の上に登り、耳を澄ますと、音が聞こえる。
さわやかで、温かい彼女の唄声。
そして、すべてを攫っていった、あの憎くて、黒い音。
強大な力はすべてを飲み込んでしまい、
生き残るべきだった人を連れて行ってしまった。
彼女は生きている。そして、丘の上には光がさしている。【shining hill】

『不幸な事実』
少女は、流されてしまったのだ。
ニュースが連日喧しく報道している。
誰かの記憶に残るのだろうか。
誰かが彼女の行先を知っているのだろうか。

神は、人を救うのではない。
慈悲も無慈悲も、すべては授かった運命。
自然だって失われる。
人が失われないわけがない。

記憶の縁に佇んで、
昇って行く月を眺めながら。
思い出は失われ、
思い出は残される。

死に急ぐ彼女には、天罰を。
幸福な少女には、平等を。

もう、水の音は聞き飽きた。
流れる涙もいつしか唯の汚れに。
それでも私は歌い続ける。
失くしたものに、出会うために。

『一人目の弔い』
少女は動かない。
少女は目を開かない。
少女は歌わない。
少女は感情を現さない。

そんな少女の代わりに、彼女は、
そして少女を愛したすべての人は、
この場所にいるのだろう。【最期】

『二人目の思い出』
高いところから、気持ちを落とした。
粉々のハート、カケラを亡くした。
幼い指先には血が溢れた。
色を失う、君が笑った。

大好きな人と嘘を重ねて、ただ一度だけ嫌いとつぶやいた。
手放した憧れの声を、対岸の死神が飲み込んでしまった。

青の思い出は、黒い影となり、
いつも丘の下を埋め尽くす。【青の思い出】

『真実』
笑い合っていた時間は戻らない。【past】

『銀河鉄道の夜』
あぁ、少女は本当に、本当の天上へゆけるのだろうか。
母様は少女を許してくださるのだろうか。
三角標は無情にも通り過ぎてゆく。
悲しみがこだまして、思い出ともお別れ。
今は少しだけ、さみしいけれど。
また、あのころのように、遊ぼうね。【station】

音も色もない世界で、
空想も妄想も同窓もない大きな月の中で、
少女は、歌い続けます。

思い出は、終わることはありません。
彼女はいつまでも、生き続けるのです。

あなたが、いるから。


終わり



これが、今回のCDの物語です。

二人の女の子がいます。少女と、彼女です。
幸せな少女は不幸に、不幸な彼女は幸せに、なれたのでしょうか。
すべてを失うきっかけとなった黒い大きな影は、皆さんもご存じの、あの悲しい出来事かもしれません。
今回のCDには、随所に水の流れる音が聴こえます。
青の思い出は、青いまま、オモイデバコにしまっておくべきなのです。


最後に、【月】という曲を入れています。

この曲が、アルバムを作ろうと思った発端です。
大学時代、私はとてもかわいい友達が出来ました。
月という名前の女の子。
ところが、あるころからその友達の姿を見ることが少なくなりました。
久しぶりに二人きりであった日、その友達が、すべてを打ち明けてくれました。
とても悲しい話で、私はその時、肩を抱くくらいしかできなかった。
それがすごく悔しくて、何も共有できない、何も手を差し伸べられないのがあまりに悔しくて。

自分には、何か作ることができないかと思い、
折しもそのころ流行の兆しを見せていた初音ミクという歌声と、たまたま授業に要るからと購入したmacに入っていたDAWがあったので、いつか、アルバムを作って、その友達に渡そう。
そう思ったのが、すべてのきっかけです。
オモイデバコというストーリーは、この友達のキオクとコトバを想像して作った空想です。


月という友達は、今はあの頃より笑えるようになり、友達もいるみたいで、アルバムを作る意味はあったのかなかったのか、あまりわからないけれど、 少なくとも音を届けることができたので、私は満足です。

こんな思いをすべて詰め込んだのが、最後の曲の歌詞です。



あまり意味の分からない解説だったと思いますが、
いかがでしょうか。

CDは完全受注無料生産です(笑)ほしいかたはメールをください。
お日にちはいただきますが、必ずお渡しします。
たくさんのスタッフに、すてきな絵を描いていただいています。

長文におつきあい、ありがとうございました♪


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